いわゆる一つの「マーケティング」に関する欺瞞

 よく言う「新しいマーケティング」って、もう何十年も前から謳われていることですが。
 それらの主な骨子は、
・もはや「売らんかな」の姿勢では誰も買ってくれない。
・消費者という言葉ではなく「生活者」という用語を使うべき。
・大衆(マス)ではなく個人(パーソン)にフォーカスしなければならない。
 といったところに収斂されるのではないでしょうか。
 
 でもさあ、極論を承知で言うと。
 マーケティングって、根本は「多くの人に買ってもらうための技術」以外の何者でもないんでないの?
「こんなにいい製品を作りました」「こんな新しいサービスを考えました」「それがあなたのためになると信じています」(だから買ってください!)
 ちょっと前に流行った「ロングテール」だって、結局「小さな売上を積み重ねると大きなビジネスになる」ってことでしょ?
 それが、情報革命のインフラたるインターネットによって実現した、というだけのことで。
 
「広告はラブレター」説についても、たとえば
「ボクはキミのことが好きです。キミのことを大事にします。(だから付き合ってください!)」というのも、
 誤解を怖れずに言えば「自己の独占欲を充足させよう」としているだけではないのでしょうか?
 
 それを悪い、とか間違っているというのではありません。
 それこそ日本国憲法にある、

第13条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする

 ということであり、ミルトン・フリードマンが強調する

文明社会で個人に対して力を行使するのが正当だといえるのはただひとつ、他人に危害が及ぶのを防ぐことを目的とする場合だけである。「資本主義と自由」

 つまり、皆が個人の欲望に忠実に(他人に危害を与えないかぎり)競争することが「社会全体の幸福を実現する最も効率のよい方法である」という人類史上最大の社会的知見なのではないかと思います。
 
 だから、いい子ぶってないでさあ。
「ボクは世界で一番、キミのことが好きです」
(世界中のどんな女の子より君のことが好きで、世界中の男子の中で一番君が好きなのは僕だよ)
って素直に言えばいんじゃないの?
 
 色々と小賢しいテクニックを弄する方がかえってウザったいってこと、あ〜りませんか。
 もっと率直に言うと、
「今どきのマーケッター(情報を送り出す側)は、草食系男子すぎる。もっと肉食系にガンガンとストレートに迫ったほうがよくなくない? ってことです。(おわり)