『LIMIT(1〜4)』フランク シェッツィング

LIMIT〈1〉 (ハヤカワ文庫NV)

LIMIT〈1〉 (ハヤカワ文庫NV)

一般社団法人 宇宙エレベーター協会 大野修一会長 推薦!

http://ameblo.jp/dokugokan/entry-10578596706.html
(↑第1巻を読んだ人の感想、わかりやすい紹介)

『深海のYrr』を書いたフランク シェッツィングの最新作。
「大山鳴動してネズミ一匹↓」だった前作に比べて、さらにスケールの大きい宇宙開発の話。
http://www.shikoda.org/proverb87.htm

なにしろ登場人物の多いこと多いこと。しかしさすがドイツ人、肉食系のスタミナでぐいぐい話を持っていく。ダン・シモンズみたい。そう考えると、きっと本当は村上RYUちゃんが書きたかったであろう近未来小説。「歌うクジラ」は22世紀の話だが、こっちは2025年。宇宙エレベーターは既に完成している! SF史上最速を記録。それだけで凄いw
 
LIMIT〈2〉 (ハヤカワ文庫NV)
第2巻は、ハードボイルド。舞台は2025年の上海。主人公は、サイバー探偵「オーウェンジェリコ」。かっこいい! 息もつかせぬサスペンスとハードアクション(月並みな言葉だなw)。
 
LIMIT 3 (ハヤカワ文庫NV)
第3巻、どんどん面白くなる「近未来サスペンス超大作(本の帯)」。1巻は月の話、2巻は地上の話。3巻で、それが見事に繋がる。宇宙エレベーターではなくて「テロ」で。アメリカのアクション映画のような面白さ。それゆえ、主役が不死身のようなので、ワクワクドキドキしながらも安心して読める(笑)
 
LIMIT 4 (ハヤカワ文庫NV)
第4巻。近未来、アメリカの最大のライバルが中国であることは自明のこと。しかしそれらは、国家・政府間で争われるのではない。主要なプレイヤーは、もはや民間企業グループなのだ。宇宙開発競争も、そしてテロですら。ドイツ作家ならではの、アフリカ大陸まで視野に入れたグローバル展開。腐っても(失礼)栄光のヨーロッパ勢の悪あがきw クライマックスまで、あっという間。

訳者あとがき(p589)から

そして宇宙エレベーターは、アメリカではNASAや民間企業が実用化を目指して開発を進めている。日本でも日本大学をはじめ多くの機関で研究が進められており、一般社団法人宇宙エレベーター協会が情報収集・発信に尽力している。 資金さえあれば、明日から着工できる段階なのである。

月面ホテルでテロが起こって(ネタバレになるから、詳しく書けないけど)招待された資産家のゲストの会話。(P458から)

 「あんたは投資するつもりなのか」
 「だめなのか?」
 「こんな大災難のあとで?」
 「だからどうだというのだ。タイタニック号が沈没したから、
  人類は船を造るのをやめたのか」

人類は未熟な進化の鬼子なので、過ちや争いはきっとなくならないだろう。しかしそれでも「新しいものを造り続けてきた」のが人類の歴史であるのだから、未来もそうあるべき。もしもそれができないのなら、太陽系のちっぽけな惑星の表層で「エコ」と叫んで、縮小再生産を繰り返して滅びるだけ。どうせいつかは(1億年以上栄えた恐竜がそうであるように)人類も滅びるか新しい種に進化するしかないんだから、チャレンジする方に1票!(民主党代表選挙は、まるで逆?w)

まあ、不朽の名作SFとは言えないけど、荒唐無稽のハリウッド製アクション大作を観に行くより、コストパフォーマンスは高い。