久米宏の「謝罪外交万歳」に賛成。

久米宏 ラジオなんですけど
http://www.tbs.co.jp/radio/kume954/pod/index-j.html
の、2010年08月14日放送:オープニングトーク
http://podcast.tbsradio.jp/kume954/files/20100814.mp3
(8分後、特に13分頃から)
いいこと言ったので、メモ。

・西欧列強は謝ったことはない、しかし謝らないのがそもそも間違い。
・もしドイツが100年にホロコーストの謝罪を止めても日本は謝罪を続けるべき。
・加害者が「もう謝るのは止めよう」というのは根性なし。

アイザック・アシモフ『ロボットと帝国』での、ソラリア女王グレディアの演説(*)を思い出すべき。
強者が弱者を虐げるのは必然、という考え方は強者と弱者が逆転した時の復讐を正当化するだけ。
悪の、負の連鎖を止めるためには、過去の過ちは謝罪すべきであり、それを忘れてはならないということだ。
数多くの命と財産を奪い、民族としての誇りを傷つけたことは歴史の事実なのであるから。
被害者から「もう謝らなくてもいいよ」と言われても止めない覚悟がないなら最初から謝るなと。
 

(追記)
ちょいと長いけど引用するよ。
「溜池通信 8月6日号 特集:核と広島のソフトパワー外交」
http://tameike.net/pdfs8/tame449.PDFから

 以前から、日米間の「相互献花外交」を提唱しているのは、ベテランジャーナリストの松尾文夫氏である。幼年期に福井大空襲を体験した松尾氏は、長じて共同通信ワシントン支局長となり、ニクソン政権の報道で名を馳せたアメリカウォッチャーである。米国社会の深層に切り込んだ『銃を持つ民主主義』(小学館)をご存知の方も多いだろう。
 その松尾氏は、昨年刊行された著書『オバマ大統領がヒロシマに献花する日』(小学館101 新書)の中で、1995 年に欧州で行なわれた「ドレスデンの和解」のようなセレモニーが、日米でも行なわれるべき、と主張している。
 同書によれば、ヘルツォーク独大統領はドレスデン演説において、「生命は生命で相殺できない」というロジックを打ち出した。過去を水に流す時には、「お前たちも残虐なことをしたではないか。だから“おあいこ”だ」という、ありがちな議論を排しなければならない。お互いが「死者を悼む精神」で一致し、かつての敵味方が一緒になって犠牲者を悼むことにより、「和解」が可能になるというのである。
 日米関係でいえば、米国大統領が広島、長崎を訪れて花束を捧げ、日本国首相は真珠湾アリゾナ記念館を訪れるべきである。相互献花という鎮魂の儀式によって、戦争にけじめをつけることができ、新たなスタートに立てるというのが同書の主張である。
 あまり知られていないことだが、ナンシー・ペローシ下院議長は2008 年9 月に原爆慰霊碑に献花し、河野洋平衆議院議長が「返礼」として同年12 月にアリゾナ記念館に献花している。両国の立法府の長の間では、すでに「花束外交」が完了しているのである。

『銃を持つ民主主義』は既読。上述の箇所には共感したことを覚えている。
 
(*)正確にいうとグレディアは女王ではないけれど。
 スペーサー(http://bit.ly/c3jfJu)のグレディアと、セツラーのご老体ビスタヴァンの対話。(文庫版上巻:http://www.amazon.co.jp/dp/4150112541 P319から)

 グレディアは静かに言った。「わたくしたちが強かったころ行った悪行の数々をあなたはおぼえておいでですか?」
 ビスタヴァンは言った。「忘れはしないかという心配は無用だ。毎日、思い出しておる」
「よかった! それでは、してはならないことはわかっておいでですね。強者が弱者を虐げるのはよくないということを学ばれたわけです。したがって立場が逆になり、あなた方が強く、わたくしたちが弱くなったときに、あなた方は弱者を虐げたりはしない」
「ああ、そうだ。そんなお談義を聞いたことがある。強い時には道徳など耳もかさなかったくせに、弱くなると熱心に説教する」
「しかし、裏をかえせば、あなたは弱いときは、道徳を云々し、強者の行為に怯えていた──ところが強くなると道徳を忘れる。道義を守る者が順風に乗って道義を忘れるより、道義を守らない者が、逆境に身をおいて道義を学ぶほうがましですね」
「われわれは、受けたものをそのままお返しするだけだ」ビスタヴァンは握り拳を振りあげた。
「あなたは、こうしてもらいたいと思っていたものを返すべきです」グレディアは両腕を広げて抱擁するようなしぐさをした。「人間ならだれしも、仕返ししてやりたいと思うような不当な仕打ちを受けたおぼえはあるものですよ。あなたがいま言われているのは、つまり強者は弱者を虐待するのは正しいということですよね。ということは、あなたはスペーサーの過去を正当化していることになり、したがって現在に不満をとなえるべきではないということです。つまりわたしが言いたいのは、われわれが過去において行った暴挙はまちがいであったということであり、将来においてあなた方が行おうとしている暴挙も同様にまちがいだということです。残念ながら過去を変えることはできない、しかし将来がどうあるべきかをこれから定めることはできます」
 グレディアは口をつぐんだ。ビスタヴァンがすぐに答えなかったので、彼女は大声をはりあげた。「新しく生まれかわる銀河系を望む方はどれだけおられますか、古く悪しき銀河系が果てしなく続くよりも?」

「銀河系」を「地球圏」に置き換えて。いや、もしもそれができないなら、そもそも人類は地球上で滅びさるだけのことだ。