技術の役割

『続 深代惇郎天声人語』(朝日新聞社)P35から

高い目標をかかげると「非現実的だ」といわれ、目標を下げると「理想がない」といわれる。人生永遠の矛盾かもしれない。

二年半前(注:1973/4/14掲載)、米国で「自動車の排気ガスの有毒成分を90%へらせ」というマスキー法ができたときも、「不可能だ」とはげしい反発が起きた。このときの立案者、マスキー上院議員の答えがいい。「基準とは、必要とされるコントロールがどの程度かをいうのであって、現在手にしている技術の程度であってはならない」。
人間のための目標があってこそ、はじめて技術の目標がある。現在の技術水準では実現不可能に思われるところに、人間の必要が起こったとき、それを突破することが「技術」の本当の役割だろう。

今週末、船橋市の日大グラウンドで「宇宙エレベーター技術競技会」がアジアで初めて、開催される。
宇宙エレベーターは、いつ完成するんですか?」と聞かれたとき「エドワーズ博士は2029年って言ってるよ」と答えているが、それも一つの案に過ぎない。
 ケネディ大統領が「この10年以内に月に人間を送り込む」と宣言したのは、1961年5月25日。その8年56日後に、人類は月面に立っていたのだ。“We choose go to the moon.”──要は、夢や目標をどう設定するかということに尽きる。
そう、「第1回 宇宙エレベーター技術競技会」のスローガンは、“Climb me to the moon.”である。
 

(追記)当日の模様。


 
 
(追記2) 
@nifty:デイリーポータルZ:宇宙エレベーターへの第一歩!競技会を見てきた

 
(追記3)
第1回宇宙エレベーター技術競技会 結果発表 JSEA 一般社団法人 宇宙エレベーター協会