「世界を動かす石油戦略」を読んだよ


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石油は、世界全体のエネルギー消費の四割をまかなっている。この石油をめぐって、米国と中東産油国、ロシア、中国が二〇世紀とはまったく異なる「国際政治ゲーム」を繰り広げようとしている気配が濃厚である。石油をめぐって国際情勢が大きく動かされる時代、あるいは石油が国際政治によって大きく動かされる時代を再び迎え、日本はどのように対応すべきなのか。

新書というものは単行本と違って「時宜に応じたテーマに対して一気に編纂した」雑誌のようなものだと思っている。(岩波新書の一部は除く)その意味で、5年前の新書を読むという行為には意義を減じざるを得ない。ま、単に積読だったことと、昨今の原油高に対して何らかの知見が得られれば、と思った次第。ところがfinalventさんが、テンポラリーなテーマの本でも時期を置いて読むとその本の価値が分かるよ、とどこかで書いていた。どんぴしゃ! 本書は、その「新しさ」失っていない。つまり、この本の中には真実がある。もちろん著者の一人石井彰氏の新刊、たとえば「石油 もう一つの危機」を読んでもためになるかもしれないが、今この本を読むという味わいも捨てがたいものがある。

目次
序章 石油をめぐる地政学とは何か?
第1章 なぜ米国は石油に政治介入するのか?
第2章 石油同盟と化す米ロ関係
第3章 さらに不安定化する中東
第4章 大きな攪乱要因、中国
第5章 新しいエネルギー戦略を求めて

著者らは、旧態依然とした資源確保の考え方を「石油をめぐる地政学」として、国際石油市場で取引される原油という商品の本質に迫っていく。端的に言えば「米国の中東石油依存度は低い!」にもかかわらず何ゆえ中東にコミットせざるを得ないかを明らかにする。ロシアの台頭、不安定化する中東(書かれたのは、対イラク戦争前夜である)、中国の高度成長まで視野に入れて「天然ガス社会になりつつある欧米」に乗り越されたわが国のエネルギー戦略について力強い提言で締めくくる。政治家(秘書でもいいけど)とジャーナリストの皆さん(なりそこないの某キャスターとかも)は読んでおいたほうがいいんじゃないの? マジで。いやあ、勉強になりました〜