最終定理(アーサー・C・クラーク, フレデリック・ポール)
![最終定理 (海外SFノヴェルズ) (単行本) 最終定理 (海外SFノヴェルズ) (単行本)](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/41eilkPEesL._SL160_.jpg)
- 作者: アーサー・C・クラーク,フレデリック・ポール,岩郷重力+T.K,小野田和子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/01/22
- メディア: 単行本
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面白いじゃないですか〜
テロや紛争、近未来の俗っぽい描写はたぶん共著者であるフレデリック・ポールの手によるもの(逆にそこが読みやすい)。「この広い宇宙でわれわれは孤独ではない、人類ならざる知性がわたしたちを待っているかもしれない、というクラーク的夢想」(by巽孝之)は巨匠の最後の長編にふさわしい。
人類は、一刻も早く「非致死性兵器」と「宇宙エレベーター」を造っておかないと。
2つの短いセリフ
「だからいったでしょ」妻マイラの口癖。女の勘は常に正しい。
「はあ」主人公ランジットの決めセリフ。相手をバカにしている訳ではない。彼の頭が良すぎるだけだ。
2つの名文句
いまの地球は、宇宙から見ればこんな星なんだぞ。いまの人類は異星の知的生命体から見ればこんな存在なんだぞ。これでいいのか? きみたちはこの惑星を、人類という種族を、どんな方向へ導いていくんだ?(訳者あとがき)
『汝の行動の格率が、つねに普遍的立法の原理となるように行動せよ』カント
──それを、ひとことで言えば──
『人にしてもらいたいことを人にしなさい』(P329)
もちろん、この作品が名作かといえば決してそうではない。そうではないが、巨匠が全作品を通じていいたかったことの(ほぼ)全てが網羅されていることは間違いない。それでいいではないか。
著者らをはじめ世界のSF作家が日本で開催された「SF大会」にやってきて、皆で広島の話をしたときのエピソードが書かれている「まえがき」も素晴らしい。(P13)西暦1945年8月6日の「憎しみの光」を「星からだれかが見ているかもしれない」。この想像力こそSFの真髄だ。